2001 3/23

タワシのからくり

ちょっとだけ釣りに関係した、受け売りの話題を一つ。

しょの1

以前、田淵義男氏の書いたエッセイやフライフィシング教書の中に、ブナムシのフライ(別名 試験管たわし)というのがあるのを見つけて、印象深かった経験があります。グリーンキャタピラーとも呼ばれるこの毛虫フライにだけセレクティブになったイワナの話を読んで、想像される光景にワクワクしたものでした。
写真に写ったそのフライを見て、コンナンデほんとに釣れるのか?とも思いましたが、からくりアリデス。

つまりこうゆう事です。
冷温帯に属す関東/中部地方以北では、植林を免れた森林は基本的に楢やブナの森になると言います。(極相林と言うんだそうな・・・フムフム)こうゆう姿で残されているのはいわゆる ”保安林”ですので、里山よりもやや高地の県境などの山林が該当します。

このブナの森なのですが、その森林更新には下ばえのササと、そこをすみかとするヒメネズミなどとの間で微妙な食物連鎖が成り立っているというのです。
ブナは受粉して実生(みしょう)を落とし、これが幼木に育ちますが、これはほとんどヒメネズミなどの小動物に食べられてしまいます。このヒメネズミなどはフクロウやノスリ、トビといった猛禽類から身を隠すために笹の中の地面に巣を作り生活しているため、この笹の生えている領域の変化にともなって生息域を拡大したり縮小したりしています。そこで ”ブナ”はこの笹の枯渇または縮小とシンクロして実を付ける戦略を持っているというのです。つまり笹が後退するとネズミが減って、種を落としても食われにくくなり、これをねらってブナの豊穣な年が数年サイクルで変化するというのです

しょの2へつづく

2001 4/1

しょの2

このブナが豊穣な年には、葉も豊かに茂るため蛾の幼虫であるブナムシ(ブナアオシャチホコ)が大発生します。
こいつが”試験管たわし”フライの正体だと思われます。

この水源涵養の目的を持った保安林であるブナ林から供給される多量のブナムシに、渓流魚は驚喜するそうです。
そしてそのサイクルは5〜8年。近年では1995年に全国的なブナ豊穣年が確認され、昨年2000年には日本海側一帯の森林帯でやはりブナの豊穣が確認されたそうです。つまり、2001年または2002年、バックヤードにブナ林をもつ渓流では、春から初夏にかけたある時期、この ”試験管たわし”フライが活躍するかも?といったちょびっと飛躍?した話題です。

ブナ?見分けられますか? ”試験管たわし”・・持ってる?

ちなみに大量発生したブナムシの一部は河川に流れてイワナたちのご馳走になり、地面に落ちたヤツは、その骸からサナギタケ(冬虫夏草の一種)が大発生するので、それと判るそうです。

渓流の食物連鎖に注目し、カディスやメイフライ、ユスリカの生態を少しだけ知っている我々ですが、ワームやテレストリアルと森林の連鎖メカニズムも釣りに大きく係わっているようです。
  あな、おもしろし

k−taka